口唇ヘルペスとは
ヘルペスウイルスの感染を原因とする「ヘルペス」のうち、唇やそのまわりで発症するものを「口唇ヘルペス」と言います。
ヘルペスウイルスは、一度感染するとその後も体内に潜伏を続け、免疫力が低下したタイミングなどに再活性化します。そのため口唇ヘルペスも、再発を繰り返しやすい病気となります。
口唇ヘルペスの症状と
その経過
口唇ヘルペスは、主に以下のような経過を見せます。
唇に多発したり、チクチク・ピリピリした痛みを感じる場合には口唇ヘルペスを疑い、お早めに当院にご相談ください。
段階 | 症状 |
---|---|
自覚症状あり | ・チクチク、ピリピリとした痛み ・かゆみ ・熱感 |
自覚症状を感じて 数時間後 |
・赤み ・腫れ |
自覚症状から 2~3日後 |
・小さな水ぶくれの多発 ・水ぶくれ同士が合わさり大きくなる |
自覚症状から 1~2週間後 |
・水ぶくれがかさぶたになる |
上記はすべて口唇に現れる症状ですが、初めて感染した場合には、顎や耳の近くのリンパ節が腫れることがあります。
水ぶくれを潰す、かさぶたを無理に剥がすといったことはお控えください。感染の拡大や治癒の遅れにつながります。
ヘルペス・口唇ヘルペスの
原因
ヘルペスウイルスにはいくつもの種類がありますが、口唇ヘルペスはこのうちの単純ヘルペスウイルスⅠ型の感染を原因とします。
単純ヘルペスウイルスⅠ型の感染自体は、珍しいものではありません。20~30代で2人に1人、60代以上のほぼすべての人が感染しています。
健康で免疫力が高いうちは発症しませんが、加齢・疲労・病気・ストレスなどによって免疫力が低下したタイミングでウイルスが活性化し、口唇ヘルペスの発症に至ります。
接触(キス・性行為など)
すると口唇ヘルペスは
うつる!?
単純ヘルペスウイルスⅠ型は、皮膚や粘膜の接触によって、人から人へとうつります。感染経路としては、食器やタオルの共用、またキス・性行為などが挙げられます。
発症期間は特に人にうつしてしまう可能性が高くなります。小まめに手を洗う、食器・タオルを完全に分ける、キス・性行為を控えるといったことで、まわりの人の感染を防ぎましょう。
また水ぶくれの中には、単純ヘルペスウイルスⅠ型が含まれています。潰したりしないようにしてください。
治療
口唇ヘルペスは、自然治癒が期待できます。水ぶくれからかさぶたになり、かさぶたが剥がれると、きれいな粘膜・皮膚が現れます。
早く治すため、まわりの人への感染を防ぐためには、抗ヘルペスウイルス薬の内服・外用が有効です。治癒までの期間が短くなり、家族などまわりの人へと感染させてしまうリスクも下がりますので、見た目が気になる・家族と住んでいる・接客業などで人と接する機会が多いという人は、積極的な治療をおすすめします。
内服薬・外用薬で十分な効果が得られない場合には、抗ヘルペスウイルス薬を点滴投与します。
口唇ヘルペスはどのくらいの期間で治る!?
通常、内服薬や外用薬を使用すれば、5日程度で治ります。ただし、重症例などでは治療が長引いたり、入院が必要になることもあります。
繰り返す口唇ヘルペスの
予防・再発防止
ヘルペスウイルスは一度感染すると、生涯にわたって体内に潜伏します。
以下のような方法で、発症・再発を予防しましょう。
規則正しい生活を送り、
健康を維持し、免疫力を保つ
バランスの良い食事、十分な睡眠、適度な運動、禁酒、禁煙などで生活習慣を正し、健康を維持すれば、免疫力が保たれ、発症や再発の予防となります。ストレスを溜めない・解消することも大切です。
皮膚科を受診し治療・指導を受ける
自然治癒を期待できる口唇ヘルペスですが、皮膚科で治療を受けることで治癒までの期間の短縮が期待できます。
また日常生活上でのアドバイスを受け、まわりの人への感染、ご自身の再発を防ぎましょう。
紫外線の浴び過ぎを避ける
強い紫外線は、単純ヘルペスウイルスⅠ型の再活性化を引き起こすことがあると言われています。紫外線対策を行い、紫外線を浴び過ぎないようにしましょう。
よくある質問
口のまわりにブツブツができています。ニキビかなと思うのですが、様子を見ても構いませんか?
ニキビの可能性もありますが、ヘルペスなどの他の皮膚疾患の可能性も考えられます。
特に、赤い発疹が出ている場合や、かゆみ、痛みなどの症状がある場合は口唇ヘルペスの疑いが強まります。
まわりの人への感染を防ぐためにも、お早めに当院にご相談ください。
口唇ヘルペスは、なぜ繰り返されるのでしょうか?
ヘルペスウイルスは一度感染すると生涯にわたって体内に潜伏を続けます。そして免疫力が低下した時に再活性化し、口唇ヘルペスとして繰り返し再発します。残念ながら、ヘルペスウイルスを完全に体外へと排除することはできません。
再発を予防するために、できることはありますか?
食事や睡眠、運動などで健康を維持し、免疫力を保つことが何より大切です。疲労、ストレス、強い紫外線などもウイルスの再活性化につながるため、心身の休養をしっかりと摂ること、紫外線対策をして紫外線を浴び過ぎないことも大切です。
口唇ヘルペスの症状が現れているあいだ、唇のケアはどうすればいいですか?
外用薬、保湿剤などを処方いたしますので、ご使用ください。
年に何度も口唇ヘルペスを発症します。あらかじめお薬を処方してもらうことはできますか?
再発を繰り返す口唇ヘルペスの治療には、事前に飲み薬を備えておけるPIT(Patient I Initiated Therapy)があります。
PITの対象となる人は、以下の全てに当てはまる人になります。再発単純ヘルペスで、同じ病型の再発頻度が年3回以上出現、自分で初期症状(患部の違和感、灼熱感、かゆみなど)がわかる方に適応となります。